母娘 [日々のよしなしごと]
梅田の地下街のとんかつ屋で夕食をとっていると、
壁際のテーブルに、地味な身なりの、痩せたおばさんが着席。
寒いのにブルーのトレーナーだけで、裾のところがほつれている。
肌つやも悪く、そわそわと挙動不審で、タバコばかり吸っている。
と、眩いばかりに赤いセーターを着た女の子がお店に駆け込んできて、その向かいに座った。
「ごめんな、遅なった・・」
ハタチ前くらいか。
ブランドもののバックをさげ、いまどきのカッコをしている。
異色の取り合わせに見えたが、横目ながらに観察すると、
なるほど二人はそっくりな目元をしているのだった。
二人の間にははじめ沈黙があった。
娘のほうが口を開いた。「私、ケータイ替えてん。登録したるわ」・・
母親は心持ち恥ずかしそうに、自分の携帯電話を取り出した。
嬉々として受け取り、操作する娘。
「お母ん、ぜんぜん着歴ないなあ。早よオトコつくらなあかんで」
そんな会話がひとしきり続いていた。
事情のある母娘なのだろう。
私は、読みかけの本に再び眼を落とした。・・・・
勘定を済ませ、私は店を出る。
ふと思い出して振り返ると、娘は席を替っていた。
なぜか、母親のすぐわきに移っていた。
二人の間にもう会話はなかった。
ただ何も言わず、楽しげに肩を寄せ、
二人は同じように微笑みながら、タバコをふかしていた。
私は、ややほころんだ、そのときの母親の横顔が忘れられない。
世の中、いろんな幸せがあると思った。
壁際のテーブルに、地味な身なりの、痩せたおばさんが着席。
寒いのにブルーのトレーナーだけで、裾のところがほつれている。
肌つやも悪く、そわそわと挙動不審で、タバコばかり吸っている。
と、眩いばかりに赤いセーターを着た女の子がお店に駆け込んできて、その向かいに座った。
「ごめんな、遅なった・・」
ハタチ前くらいか。
ブランドもののバックをさげ、いまどきのカッコをしている。
異色の取り合わせに見えたが、横目ながらに観察すると、
なるほど二人はそっくりな目元をしているのだった。
二人の間にははじめ沈黙があった。
娘のほうが口を開いた。「私、ケータイ替えてん。登録したるわ」・・
母親は心持ち恥ずかしそうに、自分の携帯電話を取り出した。
嬉々として受け取り、操作する娘。
「お母ん、ぜんぜん着歴ないなあ。早よオトコつくらなあかんで」
そんな会話がひとしきり続いていた。
事情のある母娘なのだろう。
私は、読みかけの本に再び眼を落とした。・・・・
勘定を済ませ、私は店を出る。
ふと思い出して振り返ると、娘は席を替っていた。
なぜか、母親のすぐわきに移っていた。
二人の間にもう会話はなかった。
ただ何も言わず、楽しげに肩を寄せ、
二人は同じように微笑みながら、タバコをふかしていた。
私は、ややほころんだ、そのときの母親の横顔が忘れられない。
世の中、いろんな幸せがあると思った。
2009-10-27 02:16
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