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夏の須坂 [日本の町散歩(中部)]

須坂は北信濃地区でも人口5万を超える大きめの町である。
明治期には繭の集散地として養蚕業で栄え、
一躍北信濃随一の商業都市として賑わいを見せたそうだ。
日本の製糸産業が衰退して久しい今、須坂の町はとても静かで、人の姿も車の数もまばら。
観光地としても、隣町の小布施の景気とは程遠いのどかさだ。
それでも老舗の呉服屋をはじめ、数多くある酒蔵や味噌蔵はどれも健在で、
伝統的な技と意匠を生かした新しいお店もまた少しずつ増えてきている。

静かではあるが、侘しさはこれっぽっちもなく、
どこか堂々として落ち着いて、貫禄さえ感じさせるこの町の散策は気持ちがいい。
女性的でこまやかな造作が美しい小布施とはまた違った、
もっと気ままで、もの言わず鷹揚とした「男の魅力」に包まれた須坂の夏を堪能した。

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田中本家博物館
夏から秋にかけて、最近の須坂の町をあちこちで彩るのがこの滴るばかりに咲き乱れる青い朝顔。ヘブンリー・ブルーという外来種だそうだが、これがなんとも須坂の街並みの名脇役として調和している。成長が旺盛で生育に手が掛らず、多少の寒さなどモノともせず11月ごろまで咲き続けるのだそうだ。

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田中本家博物館は、須坂でも有数の豪商であったという田中家のお屋敷を、その収集品とともにそのまま公開したもの。母屋、客殿、蔵などが広い敷地の中に並び、見て歩くと当時のセレブの生活ぶりが偲べるという非常に興味深い場所であるが、この屋敷の庭では、夏になるとひときわ見事なヘブンリーブルーの群生が見られる。

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田中本家博物館


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大笹街道に沿って須坂市街北郊の様子。
田畑に交じりやはり蔵などが見られるのが、商都として歴史を築いた須坂らしい。



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須坂から菅平の高原を経て群馬県に抜ける大笹街道。


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市中心部にはかなりの数の蔵が残る。上中町あたり。


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中心部の横町通り周辺には、修復された蔵も多い。


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観光の目玉として歴史的な街並みが修復された横町通り。
かつては国道406号線として車の通行も多かったが、現在は近くに新道が作られ、
自動車の通過交通は排除されている。


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横町通りには、センスの良いブティックやカフェが少しずつ増えている。


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明治期の繭蔵を移築、改修して開設された「須坂市ふれあい館」。


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横町通りも、中町近くまで来ると、飾らない、地元民のための店が増える。


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小さなスナックが続く路地道にも、趣ある建物が。



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上中町交差点あたり。残念ながら、空き地がめだつ。


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春木町南交差点あたりの本町通りの様子。


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春木町あたり



中町通りから大笹街道を越えて東側は、かつては須坂の花街であったという。
今も、料理屋などが点在し、なんとなくその頃の雰囲気を偲ぶことができる。

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かつて、浮世小路と呼ばれた路地。


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浮世小路あたりの裏路地へ入ってみた様子。


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中町のはずれに、大正6年建築という旧高井群役場の建物が残る。


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常磐町あたりから大笹街道を見る。


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大笹街道沿いで見つけたPOLA化粧品のブティック。



大笹街道を再び西にわたって、通りや路地を逍遥する。

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大門通りの風情。


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寺町通りの一番ふもとにある旧信陽銀行の建物。このあたりも繁華街であったそうだ。
壁修理の際に足場を組むために使われる「乳釘」が蔵の白壁に整然と並ぶ。


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屈曲して劇場通りへと続く道。


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劇場通りの現在の様子。


劇場通りには、その名の通り大正3年開業の「須坂劇場」があり、そこでは松井須磨子や美空ひばりも公演したという。東京や名古屋などから生糸の買い付け業者が多数集まり、商店が両側に並んで賑わった街だったそうだ。この通りを中心に、東西へ入る裏路地を巡ってみるのも楽しい。

なお、須坂劇場は昭和52年に移転廃業した。建物は現存するが、劇場の後に入ったスーパー「あらいマート」もすでに閉店し、いまは何にも使われず廃墟となっている。

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ここにもヘブンリーブルーの花が。


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劇場通りから青木屋小路を少し入ったあたり。
ちなみに土建企業の「青木屋建設興業」は
青木屋小路への入り口近く、劇場通りで元気に営業中。


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劇場通りと泉小路の交差点から劇場通り南方を見る。もうすぐそこに須坂劇場が。


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劇場通りの昼下がり。今は、劇場のあった通りとは思えないのどかさだ。


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劇場通りから泉小路を西に入ったあたり。


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穀町あたりの路地。このあたりまで来ると少し風景がひなびてくる。


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公園通り。


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東横町あたり。


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勝善寺裏手の上町あたり。


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勝善寺


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目下夏休みとあって学生の姿は少ないものの、ここ須坂は須坂高校、須坂園芸高校、須坂商業高校など、名門の高校が多いことでも有名である。


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須坂駅近くの末広通り周辺にも飲食店が集まる。


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横町通りあたりの路地。


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「松屋小路」と呼ばれる道。かつての花街の面影は薄いが、今もすきやき屋「松屋」は健在。


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○長野電鉄 須坂駅○

須坂は、ここ須坂を基盤として走る長野電鉄で長野駅から約20分。電車の本数も1時間3~5本と多く、須坂の駅はまるで少し前の大都市圏郊外の駅のように近代的である。

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長野電気鉄道は大正15年開業。当時の須坂はそれだけの財力と重要性を持っていたのだろう。
いまも長野電鉄の車庫と運転所は須坂にあり、多くの電車が並ぶ駅構内は広い。

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駅内部はやや古びているものの、改札口近くには「駅ナカ売店」として、野菜や果物、ジャム等から手芸品まで、周辺農家の方の生産物が販売されている。

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夕方の帰宅時間。ごく一瞬ではあるが、駅の改札は、東京や大阪の都市周辺の夕方ラッシュのような様子を呈する。

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須坂が、人口5万人以上を数える都市でありながら、機能的には長野市の衛星都市となっていることがよくわかる風景でもある。

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朝の須坂駅の様子。


撮影 2010年9月、2011年8月、2012年7月
本文 2012年12月

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