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冬の渋(湯田中・渋温泉郷) [日本の町散歩(中部)]

20代の頃、温泉にハマっている友人がいた。彼は箱根や伊豆などの温泉地で鄙びた宿を探しては泊まっていたが、温泉などジジイが行くものだと思っていた私は、ほとんど興味が湧かなかった。

そんな私も、子供からオジサンと呼ばれる年頃にさしかかり、温泉というものも、たまには良いのではないかと思うようになってきた。
泉質やら効能やら、湯そのものについて蘊蓄を語る資格など私にはない。ただ、「湯の町」いう言葉の響きに惹かれ、私も、下駄を履き、浴衣の襟を正して、古き良き、正しい日本のオッサンとしてまっとうな道を歩むのもよかろうという気がしているだけだ。

そんなこんなで、冬のある日、長野県の渋温泉を訪ねた。
志賀高原の山麓に9つもの外湯を宿し、昔ながらの温泉情緒を残した小さな渋温泉の街歩きである。

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渋の温泉町は決して大きくないが、ひととおり見て歩くと半時間ではきかない。温泉饅頭を製造販売する店だけでも4~5軒はあり、朝から酒粕のいい匂いと湯気が路地のそこここから立ち上っている。

いい雰囲気だ。
町の湯田中のように大きなホテルタイプの旅館は殆どなく、古くからのこじんまりした家庭旅館が軒を連ねており、そこここに抜け道となる路地があって、小さいながら迷路のような感覚も味わえる。また、夜間瀬川に沿ってできた谷地にあるため、山に囲まれた土地という感じが強く、それがいっそうこの町の安堵感を高めているように思う。

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旅館の軒先で温泉卵や茹でられていることもある。


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朝、目を覚ますと雪が舞い始めていた。素人目には、さほど積もる様子ようにも見えなかったが、土地の人は「大雪になる」と言う。朝風呂を済ませ、早速雪の町に出て歩いてみた。

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湿気を多分に含んだ牡丹雪は、しばらく路地裏の散策を楽しむうちに、いつしか粉雪に変わった。仕出し、配達、客の送迎など、朝の温泉町は決して静かではないのだが、見上げると、無数の小さな気泡のような雪が静かにゆっくりと、しかし次々に舞い降りて、見る見るうちに、この小さな町をうずめて行った。

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渋温泉の名物のひとつだったこのストリップ劇場は、数年前に廃業した。


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渋温泉の玄関、「渋和合橋」バス停。



雪降る渋の温泉街を見下ろすかのように、斜面の中腹にある高薬師。渋温泉の九つの外湯を巡ったあと、この高薬師にお参りをして初めて、満願成就が叶うという。雪の中、とても急な階段を上り、薬師如来様を拝みにゆく。

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薬師堂から山の中腹を巡る道を歩くと、温泉街の南にある「温泉寺」へ行くこともできる。


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午後、雪は上がった。
雲の切れ間の冬の空に太陽が顔を出す。

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夜の渋

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■大湯風情

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■ 渋温泉 外湯めぐり

<一番 初の湯>

胃腸に効く湯。
木の床をもつ風情ある湯屋。
他の外湯に比べても少し照明が暗めで、一人で落ち着いて入ると和む。

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<二番 笹の湯>

湿疹に効く湯。
内部はタイル張りの簡素で小さな湯屋。
あまり落ち着く雰囲気ではないように思う。

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<三番 綿の湯>

切り傷、おできに効く湯。子宝の湯としても知られる。
無色透明ながらその名のとおりお湯が柔らかいように思う。
ただし源泉口にきちんとした仕切りが無いため、たいてい熱いのが難点。

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<四番 竹の湯>

痛風に効く湯。
タイルと木を組み合わせた湯屋で、気持ちがいい。
私が三番目に好きな外湯である。

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<五番 松の湯>

脊椎病に効く湯。
渋温泉の外湯の中では最もキレイで明るい湯屋。
湯も柔らかめで良い。

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<六番 目洗の湯>

眼病に効く湯。
風情ある木の床、とうとうと溢れる豊富な湯量、そして漂う白い湯の花。
大湯を除けば、私の最も好きな湯屋である。

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<七番 七操の湯>

外傷性諸障害に効く湯。
鉄分が多く赤い湯の花が見られる。
湯屋の風情はタイル張りであまり特徴は無い。

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<八番 神明滝の湯>
婦人病に効く湯。
湯屋は笹の湯と並んで小さめである。
ここも地元の人の利用が多い。

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<九番 渋大湯>
リュウマチ、神経痛に効く湯。子宝の湯でもある。
広さ、湯量、湯屋の風情、そして湯の素晴らしさ(渋温泉でここだけがにごり湯である)
さすがの貫禄のある湯屋である。

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■安代温泉

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■湯田中へ

湯田中温泉は、渋温泉よりも手前に位置し、湯田中駅にも近い。渋温泉が昔ながらの古びた風情を残し、小規模な旅館が殆どなのに対し、湯田中温泉は大型ホテルの比率が高いように思う。
団体での温泉利用が多かった昭和の頃は、こうした近代的な温泉街のほうが人気があったのだろうが、個人旅行中心の現在ではそれが逆転。今となっては人通りの少ない湯田中の温泉街には、かつてのにぎわいを偲ばせる独特のレトロな風情がある。

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■おまけ■ 長野電鉄湯田中駅

湯田中駅は、長野電鉄線の終点であり、志賀高原への玄関口でもある。山裾からカーブを繰り返し這うように登って来た電車が滑り込んでくると、ホームには「麗しの志賀高原」のメロディが流れ、温泉客やスキー客を和ませてくれる。駅名のとおり、駅前がもう湯田中温泉。渋温泉も、ここからバスで7~8分。

大勢の団体客が温泉に押し寄せた時代や、若者の誰もがゲレンデを目指した時代もあった。その頃は、上野からの国鉄の急行がここまで直通していたそうだ。

いま、温泉客も自家用車が主流となって、この駅から、往時のにぎわいは失われた。二番線まであった線路も、ひとつに減らされ、静かな終着駅となった。
それでも、列車が着くそのときに、駅は少しだけ活気づく。

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夜の湯田中駅。
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今はもう使われることのない一番線ホームにも、あかあかと灯がともる。


撮影  2009年12月、2011年12月、2012年1月
本文  2010年5月、2012年2月補筆


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