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ウィーン 1999 [ヨーロッパの町紀行]

 ウィーンの日々・・・僕にとってそれは、オペラ座の立ち見と、アイスクリーム・ショップと、市電の乗り回しの日々であった。もちろん舞台は素晴らしかったし、町並みはよく整備されていた。けれども、なぜか、日に日に私はどんどん「かったるく」なってくるのをどうすることもできない。ここは、黄昏の街。「今」を紡ぎだす力など、この街はほとんど失ってしまったかとのように見える。

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 ウィーンの主役って誰だろう? ビジネスマン? 女子高生? ここでは、そんな連中はよっぽど町外れに行かないと見つからない。間違いなくこの街は、着飾った老婦人たちを中心にして回っている、と僕は思う。彼女たちのきらびやかさと優雅さは、ちょっと他に思いつかないし、本当に、一人の例外もいないのだから。もし、世界のどこかで、老人向けファッションのショーなんかが有り得るなら、その舞台はウィーンをおいてほかにないと真剣に思う。

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 しかし、ウィーンでの一週間がすぎようとしている今、ひとつだけおかしなことがある。相変わらず身も心も、どこかけだるい妙な生活感、意外にも、それがだんだん気持ちよくなってきたのである。居心地が、実は絶妙にいい。極上の安楽椅子。あー、このまま仕事もせず努力もせず生きて死んでしまいたい、・・・過去の遺産の、目も眩むきらめきとともに、・・・息を呑むほど美しい夕暮れのとばりの中で・・・

信じて欲しいのだが、日の落ちるころ、この街のたたずまいの美しさといったら、もうほとんど天国的でさえあるのだ。

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 とにかく、こんなところに長居はごめんだ。刹那に身を任せる骨抜き人間になってしまう。けれども、もう少しだけ、ここにいたい。

・・・僕はいま、ウィーンを感じていると思う。

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撮影 1999年2月
本文 1999年2月

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