琉球三都 2008 ～ （３） コザ

コザという名の街は、もう正式には存在しない。現在では、「沖縄市」という面白みのない名で、沖縄県第二の都市ということになっているが、かつては日本でただ一つの、「コザ市」というカタカナ名の市であった。

その成り立ちも特異である。街としては栄え始めたのは第二次世界大戦後。この地にアメリカ軍が駐屯し、嘉手納基地ができた時から、この街は歩みを始めたのである。とくにベトナム戦争の頃、戦地に向かう前の数多くの米兵たちが刹那の楽しみを求め街を闊歩し、多くのドルで街を潤したという。ひとえに米兵といっても、黒人の集まる地区と白人の集まる地区は別で、両地区は異なる雰囲気を持っていた。そこには、占領という言葉だけでは決して語りえない、アメリカンカルチャーと琉球文化が入り混じった相互作用があり、そこからコザ独特の文化、雰囲気が生まれ、いつしかそこは、数多くの有名ミュージシャンやバンドを輩出する、沖縄随一の芸能の街ともなった。コザは、歴史の浅い街ではあるが、沖縄の戦後史が濃厚に凝縮された場所なのである。アメリカ西海岸に新しく興ったロスアンジェルスの街が、20世紀アメリカを代表する街となったように。

いま、街から往時のにぎわいは去ったが、いまももちろん米軍の兵士やその家族たちを見かけることは多いし、栄華の残り香はそこここに感じられる。

コザ　美里（吉原社交街）

コザ　胡屋十字路

コザ　胡屋

コザ　ゲートストリート

コザ　ゲートストリート

コザ　中央（パークアベニュー）

コザ　中央（パークアベニュー）

コザ　中央

コザ　中央

コザ　上地

コザ　上地

コザ　上地

コザ　照屋（コザ琉映館）

コザ　照屋（旧ホテルプリンス）

コザ　照屋

コザ　照屋

コザ　室川

コザ　美里（吉原社交街）

コザ　美里（吉原社交街）

コザ　山里

コザ　中央　（バー　BOBBY）

コザ　中央　（バー　BOBBY）

コザ　中央

コザ　中央

コザ　中央

コザ　上地（中の町）

コザ　美里（吉原社交街）

コザ　美里（吉原社交街）

コザの街で撮影中、ひとつだけ、よく覚えていることがある。
ある時、私は街を歩いているうちに、興味深い被写体を発見した。だがそれは歩道からは少々遠く、撮影するためには車道に出ざるを得なかった。私は、車列が途切れる頃合を見計らって車道のど真ん中に立ち、ファインダーを覗いた。あれやこれやと構図を考えつつ、同時に耳も澄ませていた。車が来れば即時、歩道に逃げなければならないからである。しかし車の近づく音は聞こえない。
私はこれ幸いと、あれやこれやと存分に構図を検討し、入念に撮影を済ませてカメラを下ろした。この間、少なくとも数分はかかったように思う。ふと振り返ってみた私は、驚いた。そこには車がすでに10台以上、列をなして待っているではないか！　しかも彼らは、気付かれることさえ憚られるように、随分手前に離れた位置に、そっと停車していた。そして、後に続くすべての運転手は、クラクションをププとさえも鳴らさず、じっと静かに私のわがままを待ってくれていたのである。
私は、この瞬間に、沖縄というものを感じた。ヤマトでは、ちょっとあり得ない出来事である。

撮影　　2008年5月
本文　　2013年5月

◎今回の宿

＜サンライズ観光ホテル＞
コザで宿泊した宿。つくり自体はなんということもないが、部屋は広く、スタッフは気さくで満足。それとともに、コザの地元民に昔から愛されてきたというここのバーとレストランがなんとも興味深い。コザは基地の町だけに、ステーキやハンバーガーなどの店が多いが、ここのステーキも地元では定番のひとつという。