下仁田 2013 [日本の町散歩(関東)]
二度目の下仁田は冬の日であった。抜けるような冬晴れの空の下、町にはやはりひと気はなく、かつての目抜き通りも時間が止まったかのよう。今も残る木造の古い建物の入口のガラス戸には「撞球場」とある。2Fの窓辺の木の欄干の様子は、まるで旅籠か遊郭か。階下でビリヤードに興じ、ゲームに飽きがくれば勝者は女の手を引いて、上階へとしけ込んだに違いない。
この狭い通りが、そんな庶民の嬌声に沸き立った時代があったのだ。そんなに昔のことではなかったはずである。
そんな町の記憶が、あちらこちらに封じこまれて眠っているかのような下仁田の町。しかしその場所も、その記憶もまた少しずつ、だが確実に朽ちてゆくのだ。
やはり、下仁田で最も味があるのは、狭い中央通りである。
◎下仁田駅(上信電鉄)
2014年、群馬県の富岡製糸場が世界遺産に認定された。遠い東洋の小さな島国の産業遺産が、世界的な遺産として知られることになるとは、驚くべきことであると思う。
その富岡へは、高崎から上信電鉄というローカル線に乗り、途中の上州富岡駅で降りる。下仁田はさらにその先20分たらず、終点まで乗っていけばよいだけであるが、足を延ばす観光客は少ない。
この狭い通りが、そんな庶民の嬌声に沸き立った時代があったのだ。そんなに昔のことではなかったはずである。
そんな町の記憶が、あちらこちらに封じこまれて眠っているかのような下仁田の町。しかしその場所も、その記憶もまた少しずつ、だが確実に朽ちてゆくのだ。
中央通りの風情
妙義山に抱かれた、どんづまりの終着駅、下仁田。
朝の下仁田駅前。
駅のすぐ東側に、古びた倉庫群が残されている。
かつてこの場所が、物資の集散地であった名残である。
下仁田名産として名高い葱やこんにゃくもさることながら、石灰がこの町を潤した。
駅前からまっすぐ西へ続く狭いこの中央通りが、
かつての下仁田の繁華街であった。
かつての下仁田の繁華街であった。
時が止まったままの中央通り。
中央通りより北側を見る。このあたりは色街であったという。
青い看板にかすかに残された「SONY」の文字。
貴重な現役店舗もところどころにある。
下仁田の目抜き通り、中央通りはわずか300メートルほどである。
中央通りの北側には仲町通りが東西に延びる。
仲町通りもかつて商店が並んでいたようだが、今はひっそりしている。
中央通りの中ほどから上町通りの商店を見る。
上町通りは片側二車線の道路で車の通行もちらほらあり、
自家製こんにゃくで有名な「まるへい」等の老舗店舗もいくつか残っている。
自家製こんにゃくで有名な「まるへい」等の老舗店舗もいくつか残っている。
上町通りと仲町通りの交差点付近。
歴史的な蔵などの建造物もちらほらあるが、近年流行りの「むかし町」としては
下仁田はほとんど知られていない。
歴史的な蔵などの建造物もちらほらあるが、近年流行りの「むかし町」としては
下仁田はほとんど知られていない。
やはり、下仁田で最も味があるのは、狭い中央通りである。
右側のパチンコ屋は10年以上前に廃業しているそうだが
左側のラーメン店はれっきとした現役である。
左側のラーメン店はれっきとした現役である。
右側の木造の古い建物の1Fの入口に書かれた文字は「撞球場」と読める。
ビリヤード場だったのだ。2Fの窓辺の木の欄干も味がある。
じっと見ていると、昭和以前、いやもっとさかのぼって江戸時代の町屋や
旅籠の賑わいさえも聞こえてくるように思う。
ビリヤード場だったのだ。2Fの窓辺の木の欄干も味がある。
じっと見ていると、昭和以前、いやもっとさかのぼって江戸時代の町屋や
旅籠の賑わいさえも聞こえてくるように思う。
「撞球場」のガラスは一部破損しており、中をのぞくとなんと今もビリヤード台が!
誰かがこまめに手入れをしているらしく、まるで現役当時のようにきれいに整頓されていた。
誰かがこまめに手入れをしているらしく、まるで現役当時のようにきれいに整頓されていた。
中央通りを駅へ抜けたところに、下仁田一の老舗旅館「常盤館」がある。
竹久夢二も宿泊したという「常盤館」は今も現役。
こんにゃくとすき焼きの美味しい料亭でもある。冬は下仁田ネギのすき焼きがたまらない。
こんにゃくとすき焼きの美味しい料亭でもある。冬は下仁田ネギのすき焼きがたまらない。
駅の南側にある倉庫。こちらは現役である。石灰は今でも下仁田を少しは潤している。
午後、ふたたび上町通りにやってきた。
建物の風情と、屋号が気になる「十一屋」。何屋だったのだろう?
午後もひっそりしている仲町通り。
黒塀の残る中央通り~仲町通りあたりの路地。
朽ちた建物は取り壊され、年々更地がふえてゆく。
朽ちた建物は取り壊され、年々更地がふえてゆく。
パチンコ屋はずっと昔に廃業したが、トイレだけは現役なのか。
下仁田駅近くにある人気の「きよしや食堂」。
静かなこの町のどこに、これだけ人がいたのかと驚くほどいつもお店は満員である。
静かなこの町のどこに、これだけ人がいたのかと驚くほどいつもお店は満員である。
「常盤館」の表玄関風情。
下仁田駅に帰って来た。
◎下仁田駅(上信電鉄)
2014年、群馬県の富岡製糸場が世界遺産に認定された。遠い東洋の小さな島国の産業遺産が、世界的な遺産として知られることになるとは、驚くべきことであると思う。
その富岡へは、高崎から上信電鉄というローカル線に乗り、途中の上州富岡駅で降りる。下仁田はさらにその先20分たらず、終点まで乗っていけばよいだけであるが、足を延ばす観光客は少ない。
さよなら、下仁田。
撮影:2013年12月、2014年2月
本文:2014年12月
本文:2014年12月
2014-12-19 22:38
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