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カシュガル 2008 [アジアの町紀行]

あとで振り返ってみて、あれは本当に行ったのだろうかと、ふと思う街がある。

ひょっとしたら、行ったような気になっているだけで、
本当は、すべて夢の中の出来ごとだったのではないだろうか、そんな気がする場所。

カシュガルも、そんな街だった。

中国の最西端、というより中央アジアに限りなく近い、シルクロードのオアシス都市。
ここは、ウィグル人たちの都である。

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琉球三都 2008 ~ (3) コザ [沖縄紀行]

コザという名の街は、もう正式には存在しない。現在では、「沖縄市」という面白みのない名で、沖縄県第二の都市ということになっているが、かつては日本でただ一つの、「コザ市」というカタカナ名の市であった。

その成り立ちも特異である。街としては栄え始めたのは第二次世界大戦後。この地にアメリカ軍が駐屯し、嘉手納基地ができた時から、この街は歩みを始めたのである。とくにベトナム戦争の頃、戦地に向かう前の数多くの米兵たちが刹那の楽しみを求め街を闊歩し、多くのドルで街を潤したという。ひとえに米兵といっても、黒人の集まる地区と白人の集まる地区は別で、両地区は異なる雰囲気を持っていた。そこには、占領という言葉だけでは決して語りえない、アメリカンカルチャーと琉球文化が入り混じった相互作用があり、そこからコザ独特の文化、雰囲気が生まれ、いつしかそこは、数多くの有名ミュージシャンやバンドを輩出する、沖縄随一の芸能の街ともなった。コザは、歴史の浅い街ではあるが、沖縄の戦後史が濃厚に凝縮された場所なのである。アメリカ西海岸に新しく興ったロスアンジェルスの街が、20世紀アメリカを代表する街となったように。

いま、街から往時のにぎわいは去ったが、いまももちろん米軍の兵士やその家族たちを見かけることは多いし、栄華の残り香はそこここに感じられる。

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コザ 美里(吉原社交街)

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琉球三都 2008 ~ (2) 首里 [沖縄紀行]

首里は、琉球王国の首都である。現在は那覇市に編入されてしまい、行政区分上はその一部となっているが、首里と那覇は元来異なる街であり、現在に至るまで別々の気風、雰囲気を持っている。首里の人はスインチュといい今も誇り高く、那覇のナーファンチュと混同されることを嫌うという。王都とその外港都市という関係性は、ちょうど日本本土における京都と大阪のようなものかもしれない。

 首里は丘陵地にある。古島駅を発車した首里ゆきのゆいレールは、ただでさえ高架を走っているのに、さらにぐいぐい高度をあげてゆき、その眺望はなかなか圧巻だ。首里に近づくにつれ緑が増え、その中に池や滝等が見え隠れするようになる。首里の城下町は、第二次大戦で壊滅的な打撃を受け、王都時代の華やかさを偲ぶことはできないが、いまも丘陵地ならではの湧水や自然の恩恵をうけ、那覇とは異なったゆるやかな時間が流れる宅地の合い間に、琉球紅型や首里花織の工房、そして泡盛の酒蔵が多数存在する。

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首里 大中町

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琉球三都 2008 ~ (1) 那覇 [沖縄紀行]

 沖縄に行ったら、どんな写真を撮ってやろうか。エメラルドグリーンの海、青い空。いや、私にはやはり街撮りだ。しかも、季節はオフ・シーズン。ならば、オバアたちのしわくちゃの笑顔か、はたまた子供達の屈託のない笑顔か。赤瓦の家が残る、懐かしいような町角。ほのかに感じる南国の薫り。マチグワーの賑わい。そこで、明るく、やさしくも、たくましい、ウチナンチュたちの生き様を激写するのだ。
・・・行く前は、そんなことを考えていた。

 出来上がった写真を見たら、そんなものはなにひとつ映っていなかった。それどころか、私がいまだかつて撮ったことのないような、妙な写真ばかりだった。人の姿がほとんどない。
 私の見るところ、沖縄の男たちはなんだか怠け者が多く、女たちはよそよそしかった。街並みは決して絵になるところではなかったし、市場は、間延びしてさびれていた。
 どうしたことだろうか。私は、南国の熱病か何かに冒されて、幻影でも見ていたのだろうか。

 だがともかくも、これが私の見た沖縄なのだ。

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那覇 牧志

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バルセロナ 1999 [ヨーロッパの町紀行]

 列車を降りるやいなや、ここは僕の生まれた街に似ている、と思った。なんとなく、がやがやざわざわしている。皆、一応はまじめな顔つきをしているくせに、である。格別晴れやかにも見えなければ浮かぬ顔にも見えず、老若男女、ただ同じように小市民の顔をぶらさげているばかりである。この街が、芸術の大家や奇抜な建築を生むというのがどうもよくわからない。

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