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東京(椎名町) 2008 [日本の町散歩(関東)]

商業施設の並ぶ大ターミナル、池袋から私鉄電車でわずかひと駅。椎名町というのは、地域の名称としてはマイナーであるが、「トキワ荘のあった町」として知る人ぞ知る場所である。
トキワ荘というのは、昭和20年代後半から30年代にかけて、駆け出しの若い漫画家たちが集まって住み、青春を謳歌した安アパートであり、豊島区南長崎3丁目(当時は椎名町5丁目)に昭和57年まで現存した。
最初に住んだのは大阪から上京したばかりの手塚治虫であり、やや遅れて新潟から寺田ヒロオが入った。手塚治虫は当時すでに人気漫画家であり、彼を慕う10代から20代の若い漫画家のタマゴたちが、このアパートに出入りするようになり、次第に住みついて漫画を競作するようになった。その顔触れは、藤子不二夫、石森章太郎、赤塚不二夫、鈴木伸一等で、そのほとんどが後に漫画家やアニメーターとして大成したことで知られている。やや年長であった寺田ヒロオは、自身の創作を続ける傍ら、兄貴分として彼らを励まし、時には叱り、彼らの成長を支えたという。

なんと素晴らしい青春群像のエピソードではないか。かねてから非常に興味を持っていた私は、東京に転勤となった2008年、さっそく椎名町駅に降り立ち、トキワ荘の面影を追い求めて、いまも安アパートが立ち並ぶこの界隈を散策してみた。

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東京(代官山、他) 2007 [日本の町散歩(関東)]

2006年、家電大手のパナソニックがいきなりデジタル一眼レフ市場に参入し、最初に発売したのが「LUMIX DMC-L1」であった。カメラメーカーではない家電屋がつくったデジイチなど・・という下馬評はあったが、強気の価格設定でライカのレンズを着けて鳴り物入りで登場し、量販店などでは高級感溢れるディスプレイでいかにも高嶺の花です的な存在感を造り出していた。
かねてから「デジタルカメラの画質などフィルムの足元にも及ばない」と抵抗のあった私だが、L1のパンフレットを見て初めて、その画質の空気感のようなものに魅せられた。そして、カメラそのものの本体を見て一目ぼれした私は、当時20万円程度したそのカメラを購入してしまったのである。
そのL1を手にして初めての試し撮りに、2007年秋、私は出張先の東京・代官山の街を選んだ。その成果が以下である。

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信濃大町 2009 [日本の町散歩(中部)]

信濃大町もまた、どことなく奥ゆかしい響きのする地名である。北アルプスの山塊に抱かれ、その美しい峰々への登山の拠点ともなったこの町には、かつて日本全国から多くの山男が集まり、賑わったそうだ。街には、山岳博物館なるものもある。私は、安曇野へのバイク旅の際、この街に宿をとった。この街の撮影が本命ではなかったので、本格的な撮影は行わなかったが、朝のわずかな時間にめぐっただけでも、こんなどん詰まりの山麓によくこれだけと思われるほど、多くの飲み屋やスナックが集まり、そのほとんどは老いてはいても現役で、いまもしっかり生きている町であると思われた。

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大阪(ミナミ) 2007-8 [日本の町散歩(近畿)]

大阪、ミナミは幼少のころより私のホームグラウンドであるはずだが、撮影点数はほんのわずかであり、しかもそれらはミナミの何物をも表すものではない。私にとって、ミナミを撮影し表現するということへの勇気はいまだ持ち得ていないし、それができれば私の中で何かが変わるかもしれないという思いもある。ともあれ、ミナミあたりで撮影した写真をとりあえずここで集めている。
一口にミナミと言っても、南船場、心斎橋、アメリカ村、道頓堀、千日前、難波、日本橋、島之内等、様々なエリアによって個性や客層が異なり、それぞれが隣接しともすれば融合している部分もあるというのがミナミという街の面白さであり、たとえば銀座、渋谷、新宿、青山等と街々の個性が明確な分、一つの街々の中では比較的均質であるという東京のパターンとは異なっている。また同じ心斎橋あたりであっても、たとえば鰻谷と周防町ではまた異なるなど、つぶさに見ていくと研究対象としてもかなり面白いものであろうと思ったりもする。

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大阪(空堀) 2007 [日本の町散歩(近畿)]

空堀(からほり)は、大阪市のほぼ中心部に位置するエアポケットのような地域である。周囲を高層ビルのビジネス街やネオンきらめく繁華街に囲まれていながら、この地域だけは昔ながらの長屋や蔵、路地などが残り、全長800メートルの空堀商店街を中心に、どこかほっとできる特別な空間を維持している。
数年前までは、よそ者には全くといっていいほど知られておらず、観光ガイドブックなどで紹介されることもないような地味な街という印象であったが、「むかし町」が若い女性にも人気の昨今では、もともと存在した老舗の塩昆布屋やお好み焼き屋に行列ができるのみならず、空き家を利用して続々とイタリアンレストランやらチョコレート屋やらラジオ局やらが入り込み、長屋巡りをする若者たちもいて、街に新たな息吹をもたらしている。それでも、空堀には高層ビルやマンションが立つこともなく、独特のゆるい雰囲気を保ちながら、街は静かに時を紡いでいる。

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