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日本の町散歩(近畿) ブログトップ
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大阪ノワール(島之内の夜) 2007~08 [日本の町散歩(近畿)]

30歳の頃、私はミナミの繁華街にほど近い、島之内のビルに一人暮らししていた。
道頓堀や宗右衛門町から堺筋をわたってすぐの一帯だが、喧騒はひと段落し、マンションが増え、中国、韓国などの小料理屋やバーなどがその合間にチラホラ見受けられる。
それらのマンションの多くは保証人不要、住んでいるのはホステスやチンピラ、外国人ばかりだと聞かされて、じっさい、道路には50メートルおきに警察への通報ボタンが設置されているというありさまだったが、住んでみるとそこは、大都会で隅に押しやられた、弱きもの、いわくあるものたちが、お互いに無関心を装いながらも、ひっそりと肩を寄せ合いながら暮らす街であって、そこには確かに、ある種の安らぎにもにた雰囲気が漂っていた。
夜が明けるまで、点滅し続ける巨大なネオン街の灯を、かすむ眼でぼんやりと見ながら、私はその町で宙ぶらりんに生息していた。

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大阪(汐見橋線) 2007 [日本の町散歩(近畿)]

大阪の街中に、南海電鉄汐見橋線(しおみばしせん)という、知る人ぞ知る鉄道路線がある。
難波の繁華街にほど近い汐見橋という駅を起点として伸びる路線ながら、利用客が極端に少ない。たとえば木津川駅という駅などは、大阪市内の駅なのに、乗車人数は一日わずか39人(2011年調べ)しかおらず(!)、本数は日中もラッシュ時も、変わらず30分に一本という、都市鉄道としては実に異色の路線なのである。
都会の路線がなぜこんなことになってしまったのかは、様々な要因が絡んでおり一概には言えないようだが、もともと路線が繁華街から微妙に外れて走っていて乗客が少なめだったことに加え、地下鉄などの平行路線が整備されて乗客がさらに減るにつれ、どんどん本数を削ってしまったことが、悪循環を生んだともいえよう。
いまやほとんどの大阪市民も、この路線のことを知らない。古びて手つかずの小さな駅を、人知れずひっそりと往復するだけになってしまった汐見橋線。
だが、だから私はあえて宣伝したい。もし、あなたが人生に疲れ果て、うらぶれて行く当てなくさ迷うとき、この路線に乗ってほしい、と。 ・・・なにかがあなたの心の中に、芽生えるだろうと思う。

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大阪(西周り) 2005-08 [日本の町散歩(近畿)]

在阪の写真家、妹尾豊孝氏のカメラになる「大阪環状線 海回り」という写真集をご存じだろうか。大阪環状線とは、もちろん大阪市内を環状に走る鉄道路線であるが、その東半分と西半分では、その車窓風景はじつはかなり異なる。東半分の路線は、ほぼビル街といっていい市街地を走り、電車本数も多ければ利用者も多いが、西半分は、臨海部に近い工場街や住宅地を走り、その沿線は独特の雰囲気を持っている。この違いに着目し、その西半分を「海回り」と詩情をこめて謳ったネーミングのセンスとともに、この地域が持つ、単なる下町とも異なる、なんとも言いようのない雰囲気を的確にとらえたその写真集は、確かに秀逸なものであった。
私にとっては、その地域こそがまさに、父や母の生まれ育った場所であり、お盆や正月に帰省するふるさとである。だから、その場所を客観的に対象化することひときわ難しいし、今回こうしてブログにアップする写真たちも、それをテーマに撮り歩いたわけでもない、ただの寄せ集めである。だが、どこか憂いを帯びて淀み、どこか貧しくすさんでうらぶれたこの地域に対する私のノスタルジアが、少しは表れているだろうか。

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大阪(大阪駅周辺) 2005-08 [日本の町散歩(近畿)]

大阪は、私の故郷といってよい場所である。わたしは、物心ついてからずっと、この街に対して並々ならぬ思いを寄せてきたがゆえに、大阪を被写体として写真を撮ることは、私にとって非常に難しいことであった。
18歳で実家を離れ、東京に6年、京都に4年住んだ私は、30歳を前にして奇しくも大阪で一人暮らしをすることとなった。
少しだけエトランゼの気持ちになって大阪に住み、大阪を撮り歩いた2005年以降の数年間の撮影分を、ここで公開する。

まず第一弾は大阪駅を中心とする梅田界隈の撮影分。私は大阪南郊で生まれ育ったため、大阪の街というとミナミのほうにずっと愛着があった。梅田周辺はどことなく無機質な感じがし、敬遠していたものだ。だからこそ今回は比較的素直に被写体にすることができたともいえよう。

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奥吉野(西吉野~洞川・天川~十津川)2006 [日本の町散歩(近畿)]

京都北山、丹波方面の山々に女性の面影を見るなら、この紀伊の山々はまさに父性の山である。
どこまでも続いてゆくたおやかな山容を見ていると、物言わず何事にも動じない、悠久の風を感じる。

その向こう側には、今や名高い観光の地となった熊野古道が通じているが、今回は手前側、奈良県内南部をツーリングのルートに選んだ。
奈良盆地の南端となる五條から西吉野村を通り、天川村へ。
その後一度高野山へ抜け、その後龍神から国道425号を使って十津川村へとルートを辿った。

バイク旅での撮影であり、自分の足で山々を歩いたわけではないが、
少しでも紀伊の偉容がとらえられていれば幸いである。

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十津川郷にて

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高野山 2006-2007 [日本の町散歩(近畿)]

高野山は、言うまでもなく地上1000メートルの山岳に、弘法大師空海が開いた真言密教の聖地であり道場である。仏教の聖地というと何やら静謐な閉ざされた空間をイメージしがちだが、実際に高野山を訪ねてみると、その町の大きさに驚かされる。

寺院の数は117にもおよび、街には商店、カフェはもちろん、大学まである。高層ビルまではさすがにないが、山深い地にこのような宗教都市が出現するのは実に面白い。実は高野山という名前の山はなく、ここは地形上は紀伊山地の峰々に囲まれてできた小さな盆地。8つの峰々に囲まれていることから、『蓮の花が開いたような』と形容され、仏教上の聖地としてはこれ以上ない地形といえる。平安時代の昔に、そこまで調べぬいてこの地を選んだ空海の慧眼には恐れ入るばかりである。

そんな高野山も、私のように関西で生まれ育った人間には馴染み深い地。多くの方に、小さい頃、夏の合宿とか、林間学校という名のもと、ここに預けられた記憶があるのではないか。親元を離れ、宿坊で座禅を組み、早朝には奥の院をジョギングし。。
小学生だった当時の私にも、その街を包み込む独特の山の冷気(霊気)は、どこか深閑として、心身をしゃんとさせられたものである。

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朝の高野山の町

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郊外から。 ~(1)大阪近郊 [日本の町散歩(近畿)]

都市郊外という場所に、強く惹かれた時期があった。

人間が、土地を蹂躙し、破壊し、収奪し、
しかしそれでも何ものにもなれない、弛緩した場所。
名前のない土地。
顔のない土地。
宙ぶらりんな場所。
通過するだけの場所。

そこで、人は嘆き、さまよい、幸せの幻想を夢見る。
そこからはもはや何も生まれえないことを
うすうすはかんづきながら。

そんな生もある。

20代の終わりごろ、
やはり宙ぶらりんだった私には
そこはとても居心地がよく、
そしてなぜか、とても美しい場所に見えた。


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大阪府吹田市古江台

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京都北山の四季 2004-08 [日本の町散歩(近畿)]

東京に越した今でも、京都北山をバイクで駆けまわった日々のことを思い出す。
京都で過ごした時期は、社会人になって最初の6年間にあたる。
仕事の上では、思い出すのも嫌になるくらい、辛くて長いトンネルのような時期だったが、
北山の幽谷をめぐる時間だけは、私はそのトンネルを抜け出すことができた。

むろん、ここでいう北山は、地下鉄北山駅周辺のストリートのことではない。
そのさらに北に、鞍馬、大原から丹後まで、累々と横たわる北山山地のことである。

北山の魅力は何だろう。北山の何に私は引き寄せられているのだろう。

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広河原下之町


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京都 2003-05 [日本の町散歩(近畿)]

京都に対する私の思いは、多少複雑だ。
中学→高校とむさ苦しい男子高にカンヅメにされ、6年間、通った場所。
そして、社会人になって東京を離れ、また戻ってきた場所。
私がサラリーマンとして勤めた会社の本社もまた、京都だったのだ。

いわば京都は私の青春の地であるわけだが、
青春の思い出というものが、決して甘いものではないように、
私の京都での思い出は、つらい唾液と涙の味が含まれている。
とりわけ、社会人生活の最初の数年の、ほぞを噛むような日々の記憶は
京都の風景と私の中でわかちがたく結びついている。

社会人になって3年目、少し気持ちも落ち着いてきたころ、
私はなけなしのボーナスで、現在の愛用機であるNIKON FM3Aを購入した。
そして、自分の身の回りの京都の風景をスナップするようになった。

学生時代からの社会人生活のブランクを経て、写真を撮るということを、私はまた始めた。

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「哲学の道」の春


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