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栃木 2014-15 [日本の町散歩(関東)]

栃木県の県庁所在地は宇都宮市であるが、別に栃木市というのもある。
1884年まで、栃木県庁はその名の通り、この栃木市に置かれていた。市内の人々に聞くと、「○○のせいで宇都宮に県庁を持って行かれたんだよ・・」(理由は人によって諸説ある)と、現在でも悔しがる人が多いのが面白い。町を歩けばその理由が分かる。
天皇家や朝廷の使者が日光参拝の際に通った「例幣使街道」が町を貫き、傍らを流れる巴波(うずま)川の河岸にはかつて各地からの物資が集散し大いに賑わった。そんな由緒正しき商都の民としての誇り高き思いが、いまもこの街にはふつふつと受け継がれている。
だからこそ、これほどまでに江戸から明治にかけての蔵や商家が多く街に残されているし、カメラ片手に町を歩けば、様々な人が街の歴史を語ってくれる。

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(1)栃木駅から巴波(うずま)川に沿って

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現在の栃木駅は2008年に新築された実にモダンな高架駅。
蔵の街をイメージしたファサード等に特徴があるが、都市規模や乗降客数に比べて
あまりに巨大なため、逆に閑散とした感じを受けてしまうのが残念である。


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栃木駅にはJR両毛線のほか東武日光線も発着する。


栃木の旧市街へ向かうには栃木駅からそのまま北へ歩けばよい。駅前から北東方向へ伸びる国道のような大通りを行けば、そのまま街の目抜き通り(例幣使街道)となるが、今回はそれよりやや西寄りを歩いて巴波(うずま)川の流れを目指すこととした。
区画整理こそされているがガランとした殺風景な通りをしばらく歩くが、「境町」交差点を越えたあたりから、こまごまとした街並みが広がるようになって、ほっと一息。

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このあたりでは日光例幣使街道は小道となり東西に走っている。


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旧市街と駅とを結んでいたであろう商店街が残っている。


すぐに、小さな川を渡る。これが巴波(うずま)川の分流であり沼和田用水というらしい。橋の名前は境橋。このあたりから北一帯に、懐かしいような栃木の旧市街が広がっている。

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そして、境橋からわずか50mほどで、再び川。橋の名は相生橋という。
これが巴波(うずま)川の本流であり、これが商都・栃木を育てた母なる川である。

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いまはサラサラと流れる巴波川。
渡良瀬川を通じ利根川につながっており、この川を通じて江戸と往来する舟が多数行き来した。


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本流(左)と沼和田用水(右)が分かれるあたりは公園となっている。
江戸期にはこのあたりに舟溜まりがあり賑わったという。


このうずま公園から、巴波(うずま)川に沿ってさかのぼる形でしばらく北へ歩いてみる。

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清らかな巴波川には水鳥がたくさん泳いでいる。


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巴波(うずま)川では昔ながらの小舟に乗って遊覧でき、
江戸期にタイムスリップしたかのようなひとときを味わえる。


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巴波(うずま)川の川べりの散歩はお店もチラホラあり、実に気持ちがいい。
だが、地元の人々の車の抜け道にもなっているようで、
ときおりスピードを出してやってくる車に、興をそがれる思いだ。


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漆黒の板塀が続く旧塚田家。回漕問屋を営んでいた豪商宅である。
現在は資料館となっている。


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(2)みつわ通り

さて、巴波川の散策は一時中断し、先ほどの相生橋からそのまま北へと続く「みつわ通り」を歩く。ここはちょうど巴波(うずま)川の東、川から100mほどの距離を保ちながら川と平行に北へ延びる通りである。
さらに東にある大通り(表通り)と共に栃木の街の中心地をなし、昭和40年代頃までは、裏通りとして雑多な店が立ち並んで歓楽街としても賑わったであろうことがよくわかる通りである。

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現在のミツワ通りで唯一といってよい元気な店舗が、この銭湯である。
「玉川の湯」とあるが通称「金魚湯」と呼ばれ、その名の通り浴室内に大きな金魚の水槽がある。


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うーむ。。今となっては寂しさがつのる裏通りだ。


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かつては映画館もあったようだ。


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寂れ切った町で外国人たちが頑張っている。


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みつわ通りは栃木の昭和の残照でもあった。


このみつわ通りを北に進むと、東西に伸びる短い商店街と交差する。
この短い商店街は、歩道にアーケードがついた、これまた生活感あふれる古びた商店街で、「銀座通り」と名付けられている。

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銀座通りは、古びた印象ながら、洋品店や呉服店、喫茶店などが現役だ。


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旧塚田家の蔵がのぞいている。


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(3)巴波(うずま)川周辺 (幸来橋より北へ)、県庁堀

銀座通りでもある県道75号線が巴波川を越える大きめの橋が幸来橋である。ここから上流(北方向)を見ると、川はゆるやかに蛇行してきており、川沿いを遡上して歩くにつれ、周辺には古い歴史的建造物と思われる建物が増えてくる。

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由緒正しき商都風情を感じる川沿いの道。


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栃木といえば大谷石。大谷石作りの蔵や建物もちらほら。


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川沿いにあった古い洋館づくりの医院。


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大谷石造りの蔵を左右に持つ、この堂々たる建物は旧横山家。
左半分で麻問屋を営み、右半分で銀行を営んだという豪商の店舗兼自宅であり
内部は有料だが一般開放されている。


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さて、この旧横山家(横山郷土館)にすぐ北側で、真東から流れてきて巴波川に合流する小さな水路がある。これこそが、栃木市民が誇らしげに語る旧栃木県庁へと続く水路であり、その名も「県庁堀」と呼ばれる。
県庁堀はその昔、旧栃木県庁を始め様々な官公庁や学校などがあった区画をぐるりと1キロ強にわたって一周する環濠であり、果たしてその方面へ堀をたどって歩いてゆくと、旧県庁をおぼしき建物が見えてきた。

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いまも現存する1872年築の栃木県庁舎。
なんとも瀟洒なデザインで、当時の栃木市の文化レベルの高さが偲ばれる。
県庁としての役目は、1884年に県庁が宇都宮に移されるまでの短い間だったが
その後、何と2014年まで栃木市役所(の一部)として活用された。
今は倉庫代わりとなっているようで、今後の活用方法が検討されている。


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(4)巴波川の東側

さて、(3)で見てきた巴波川流域の東側に、南北に通る道がある。この道は(2)で見た「みつわ通り」からそのまま北に伸びた道であるとともに、後で歩く「蔵の街大通り(旧例幣使街道)」の一本西にある裏通りであるが、このあたりにも蔵造りの伝統的な建物がちらほらあって、見逃せない。

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味のある古い商店


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ここにも大谷石づくりの蔵がある


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家具屋「丸三」の伝統的な見世蔵。
いまも家具のショールームとして現役だ。


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この界隈での最大の見どころは、この三連蔵であろう。
19世紀に建てられた豪商・善野家の土蔵で、通称「おたすけ蔵」と呼ばれる。
飢饉の際に、善野家ではこの蔵から多くの物資を放出し、民衆にふるまったという。
いまは内部はモダンなミュージアム兼資料館となっており、開放されている。


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この重厚な土蔵群から目と鼻の先のところに、これまた瀟洒な洋館が建っているのが面白い。

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元は大正時代開業の医院だった様子であるが、今は洒落たカフェ
誰でも(何か注文する気さえあれば)気兼ねなく入れるのが嬉しい


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(5)常盤橋から北へ(巴波川に沿って)

県庁堀が巴波川に合流する地点に架かる常盤橋から北へ、川沿いに遡ったこのあたりは観光という意味ではあまり日の当らない地味な地域であるが、それゆえにいろいろと発見もある。

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巴波川はここでも蛇行している。
正面に見える大きな建物は旧福田屋百貨店。
2010年に閉店した後、現在は1Fにかろうじて商業施設が入っているだけで
上階は栃木市役所として使われている。
福田屋は宇都宮ベースの老舗百貨店。この栃木店は1990年オープンだが、
わずか20年で廃業に追い込まれた。
その主な原因は消費者の購買行動の郊外シフトとみられるが
中心街にあった数多くの伝統的な建物を破壊して建設、開業した為に
栃木市民の怒りを買ったことも大きいらしい。
ひそかに不買運動のような動きもあったと、地元の人は言う。


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洒落た益子焼の店「KAURI」では大根を干す光景が。


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常盤橋のたもとにある「寺内萬年筆病院」。
万年筆の修理をしてくれる現役店だが、屋号が面白い。


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さて、常盤橋のすぐ北、蛇行する巴波川の西側に
こうした廃屋のような建物が並ぶ、ごちゃごちゃした一角がある。


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どうも、遊里街だったような雰囲気もあるのだが、いかがだろうか。


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今度は川の東側を少し歩いていると、・・
路地の奥に、また洒落た緑の洋館が見えてきた。


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これは栃木病院。内科を中心とした現役の医院である。


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大正二年築。
どこも具合は悪くないが、ぜひ中に入って診療してもらいたくなる。


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(6)蔵の街大通り

これまで、巴波川に沿って歩いてきたが、栃木市のメインストリートは、県道3号線でもあるこの「蔵の街大通り」である。自動車も多く走るよく整備されたこの通りは、かつての日光例幣使街道の道筋。通りの両側には数多くの重厚な歴史的建物が残っており、期待せずに訪れるとなかなか圧巻である。

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人形店「三枡屋本店」。創業は嘉永元年という。


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三枡屋の店構え


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阿部呉服店(中)と小山高専のサテライトキャンパス(右)。
小山高専サテライトキャンパスでは、歴史的街づくりついての公開講座等も開かれている。


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左側の建物では新しいカフェレストランが開店準備中。


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表向きは近代的な店構えの「クリーニングはら」も、看板の後は伝統家屋


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これぞ看板建築!


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旅館「かな半」に人形店「やまとや」・・
栃木の商家はどれも間口は狭いが大変な奥行きがあることで知られる
(「かな半」についてはこの後レポート)


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角の重厚な建物は現在は観光物産館となっているが、
その奥の蔵部分にはダイニングバーや有名なそば店が入居し、面白い施設となっている


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観光館の奥の蔵部分。


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この建物は元足利銀行。
現在は人気のレストラン「alwaysカマヤ」となっており
誰でも往時の銀行建築の雰囲気の中で美味なハヤシライスを楽しめる。


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万町(よろずちょう)交差点に位置する桜井肥料店。
栃木市内には老舗かつ現役の肥料店が多く残っている。
利用したことがないので何とも言えないが、外から見受けられる限りでは
店内にずらりと農業用肥料が並ぶ・・というものではなく
薬局のように受付(相談台)のようなものがあり、客の要望によって
調合、注文する、というようなところらしい。


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桜井肥料店も、奥に長い敷地に様々な建物を内包していることがわかる


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下野新聞社の栃木支局。


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看板建築がなかなかの風情を醸し出す理容「銀巴里」。


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道路の向かいに青果店「八百熊」を臨む。
リノベーション(新築?)された伝統建築が美しい上に、
昔ながらの八百屋がこうして現役で営業していることが喜ばしい。


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レトロな「日星肥料」の看板も楽しい本澤商店。
現在は肥料販売のみならず、店頭で自家製漬物の販売も行っており人気だ。


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五十畑荒物店。
籐籠製品などが豊富で観光客のみならず地元の人の利用も多い。


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五十畑荒物店の隣には立派な洋館が。こちらはかつての医院だった模様。

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栃木市の中心街は整然と区画され路地は少ないが、趣ある路地を発見。


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これまた趣き深い風貌の理容「若松」。


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駅近くで見つけた新築の住宅群。伝統建築ではないが、妙に街に調和している。


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カフェ「なずな」は今風の人気カフェ。


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(7)大通りの東側

さて、「蔵の街大通り」の西側は、巴波川の流れもあって多くの観光客が見られるが、東側はあまり顧みられない・・・とは、まさにその地区にある人気のやきそば店「里」のおかみさんの弁。(ちなみに栃木市の焼きそばは、じゃがいもがタンマリ入っていることで有名。美味しい) 
おかみさん曰く、「東側は、昔から寺町なの。いいお寺はたくさんあるし、ほかにも見るべき建物がたくさんある」とのこと。確かに、駅側から定願寺、満福寺、神明宮、近龍寺・・と、静かな裏道に寺社が続き、ほっと一息つける雰囲気だ。

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蔵の街大通りからすぐ東に入ったところにある定願寺。


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定願寺山門。


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定願寺。大きな鐘楼も印象的だ。


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このあたりにも蔵は多い。


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寺町の裏手には・・のセオリー通り、ここでも寺社の合間にささやかな
飲み屋街が。フィリピンパブなどもあった。


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「里」のおかみさんに教えてもらった、堂々たる洋館建築の大場医院。
おなじ洋館建築でも栃木病院は有名だがこちらは知られていない。


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大場医院の裏手に回ると入院患者向けの病室部が続く。


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近龍寺の門前には数件の料理屋が並ぶ。



(8)嘉右衛門町(伝建地区)
さて、この嘉右衛門町(かうえもんちょう)こそは栃木市の街歩きのハイライトである。蔵の街大通りとして中心街をズドーンと北上してきた旧日光例幣使街道は、そのまま北へ向かうのではなく、万町(よろずちょう)交差点から北は大通りを外れ、やや西寄りを蛇行する細い道筋となる。この道筋沿い500メートルほどが、伝建地区(伝統的建造物群保存地区)にも指定されている嘉右衛門町である。
道筋沿いには江戸時代らの商家建築がかなりの密度で残っており、現役店舗もある。道沿いの見世蔵のほか、敷地内の土蔵も数多い。多くの車が行き交う大通りではないので、ホッと一息つきながら歩けるのがいい。北の端まで歩いて行くと、そこには歴史ある味噌蔵「油伝」があって、田楽が頂ける。
「蔵の街大通り」とは異なって、行政主導の街並み保存が行われてきたわけではなかったという。危機感を覚えた地元の人々が、お互いに連携して景観を維持・保存してきた努力と成果が認められての伝建地区指定であった。
そして、この嘉右衛門町、古いだけではない。いまこの界隈では、地元の若者たちが空き家を利用して洒落た店舗を続々とオープンさせている。カフェ、雑貨屋、古道具屋等など、いずれも、この栃木の雰囲気に見事に溶け込んだ、よい意味で脱力感、ナチュラル感あるお店で面白い。こうしたお店をめぐるのも、新しい嘉右衛門町の楽しみ方であろう。

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道筋の西側、少し距離を置いてに巴波川が流れる。
道に面した店舗から、細長く川べりまで続く商家の敷地。
敷地内には蔵や従業員向けの施設が並び、
川べりからら荷揚げや積み出しが行われた。


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商家をのぞいてみると、いくつもの土蔵が奥へ奥へと続く。


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商家群の裏手に流れる巴波川には、商品の出荷や荷揚げが行われた河岸の跡が
残っている。船着き場の雰囲気を残す平柳河岸。


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裏通りの風情もよい。岡田家翁島別邸付近にて。


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内部が有料公開されている岡田家(岡田記念館)。


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岡田家の敷地内の様子。


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岩崎肥料店。


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こちらも肥料の平澤商事。


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雑貨屋「TRAVEL NOTE」の店構え。古い町並みに調和している。


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油伝(あぶでん)味噌の玄関。
のれんのかかった母屋ではなく、その左から中に入ると味噌田楽を頂ける茶房がある。
そばには良い音がする水琴窟もあって楽しめる。


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玄関を入ったところ。


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油伝味噌は江戸時代から続く老舗。明治期に建てられた木造の店舗や味噌蔵が今も使われており、店構えのみならず、ぐるりと敷地を一巡してみると風情もひとしお。「油伝」の名は創業者の油屋伝兵衛にちなんでおり、最初はその名の通り油屋を営んでいたそうだ。

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油伝横の路地。


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右側が明治期から変わらない油伝の味噌蔵である。


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油伝味噌の向かいにある服飾雑貨店「ヒト匙+(ヒトサジ)」


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こちらは「cafe Bazzar(カフェ バザール)」。
レトロ感をさりげなく表出した出色のファサードであり、極めて好ましい。


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なお、これまでに紹介してきた栃木市の新たな潮流となる店舗「TRAVEL NOTE」「ヒト匙+」「cafe Bazzar」等は古い空き家を改装したもので、いずれも周囲の風景に溶け込んだ、極めて洗練された店舗デザインであるが、その一貫したデザインデンスには、どうやらこの潮流には仕掛け人(グループ)がいるなと感じさせられる。いずれにせよ、非常に歓迎すべき動きである。
さて、「Cafe Bazzar」では、喫茶のほかランチやディナータイムにはかなりの実力のアジアごはんが頂けるので、ぜひお試しあれ。

以下、Cafe Bazzar店内風景・・

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あれ、入ってきたのと逆側にも玄関がある。


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逆側の玄関から出ると、例幣使街道のひとつ東の通りに出てきたが
こちらの入り口のほうが正面???


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なお、「cafe Bazzar」のひとつ北にも「ツクモマメ」という、古いおもちゃ箱をひっくり返したような面白い雑貨店がある。
こちらも例幣使街道とその東の道筋との間に橋を架けるように奥へ伸びる、細長い店舗である。

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「ツクモマメ」内部。依然、工事中?


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さて、最後に以下の店舗を紹介して、栃木旅の最後をしめくくるとしよう。

「SCALES APARTMENT(スケールス・アパートメント)」
例幣使街道より一本東の道に面していた古道具屋でありギャラリ―でもあり工房でもある、ちょっと不思議な空間。

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東武日光線新栃木駅。
嘉右衛門町(伝建地区)へ行くには最も近い。


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<<旅館「かな半」>>

「蔵の街大通り」、つまりかつての日光例幣使街道に面して、今も食堂兼旅館として営業する「かな半」。栃木市内にはビジネスホテルやシティホテルも存在するが、こんなところに泊るのも面白い。
ランチのみの食堂を開店したのは最近のことだそうだが、旅館としての創業は江戸期にまでさかのぼるようだ。

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間口は狭いが、例にもれず、ひとたび戸口を開けば敷地は奥へ奥へと続く。


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奥の方にはいくつもの蔵や建物があり、その一部が客室となっている。


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さて、私達の宿泊した折の話。
私達は最初、敷地の一番奥にある建物に案内された。そこはつい最近建て増しをした個所のようで、プレハブのような安っぽいつくり。おそらく、そこが一番新しいので、とくに希望がなければそこへ案内するようにしているのだろう。中は小奇麗な和室だったが、これではせっかく歴史ある旅館に滞在する意味が半減する。
いささかガッカリした私達は、人のよさそうなおかみさんに「もっと古い部屋はありませんか?」と尋ねたところ、おかみさんは、少し驚いた様子で、それでも少し誇らしげに、次の部屋を案内してくれた。

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廊下の途中にある古い木造の建物、これが最も古い宿泊棟のようだ。


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大正7年築、松の間。とても印象深い、くつろぎの空間であった。



撮影 2014年12月、2015年1月
本文 2015年9月


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