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那珂湊 2013 [日本の町散歩(関東)]

私が小学生の頃、当時のNHK教育テレビに「たんけんぼくのまち」という番組があった。主人公のお兄さんが、ある地方の町にふらりとやってきて住み込みで働きながら、町の様々な場所を、自転車に乗って探検して周り、手作りの地図を作ってゆくいうもの。クラスでも人気の番組で、担任にせがんで欠かさず見ていたものである。

そのお兄さんが住み、探検して回るその町が「なかみなと」という名であったことは今でも鮮明に覚えている。
思えば、物心つくかつかないかの私に、町歩きの楽しさを教えてくれたのは、思えばその番組だったと思う。取り立てて観光地というわけでも、有名な町というわけでもなく、もちろん大都市ではない。
ちょうど私たちが住んでいた町と同じような、どこにでもあるような町にこそ、探検の楽しさがあるのだと、その番組は私たちに教えてくれたのである。
そんなありふれた、何の変哲もない町としておそらく選ばれたのであろう那珂湊の町に、私はふと行ってみたくなった。

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かつての那珂湊市は現在では勝田市などと合併し、行政区分上は「ひたちなか市」の一部となってしまっているが、もちろん町として那珂湊は那珂湊であり、ずばり那珂湊という名の駅も健在である。
特急も停まるJR勝田駅から、ひたちなか海浜鉄道というローカル線のディーゼルカーに揺られること十数分、私は朝の那珂湊駅に降り立った。

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「昭和」を色濃く残す那珂湊駅構内の様子。
旧式の朱色のディーゼルカーが暖気している。


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勝田からやってきた緑のディーゼルカーから学生たちが下車。
駅構内は車庫や貨物の積込み場もあって広い。


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列車を下り改札へと向かう高校生たち。大人の勤め人もわずかながら交じっている。


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列車が行ってしまうと、再び静寂が支配する朝の那珂湊駅。
隣接する車庫では、新旧様々なディーゼルカーが憩っている。


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那珂湊駅改札口から上りホームを見る。



那珂湊駅周辺は釈迦町と呼ばれ、かつて物資の集散拠点であったことを偲ばせる倉庫群が今も残されている。また、南側には「那珂湊通運」という地場の運送会社が今でも小さなトラックターミナルを構えて営業を続けている。

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那珂湊通運の小さな詰所。いい味を出している。


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荷物はすぐに列車に積み込めるようになっていたのだろうが、
いまはもう貨物列車は走ってはいない。


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倉庫群は空の色に塗られている。


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これまたいい味を出している那珂湊通運の社屋。
駅ロータリーからすぐ脇に入ったところにあり、古いけれどよく手入れされていた。


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駅脇の敷地は路線バスの待機場にもなっている。


いよいよ町中へ足を踏み入れる。・・・

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いたって普通の住宅地であるが、どことなく開放的で、のびやかな感じがするのは
ここが海辺の町であるからだろうか。


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天満宮のすぐ近くに、小さなスナック街が残されていた。
かつてはこのあたりは歓楽街を形成していたと思われるが、今は人通りはまばら。


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駅近くの釈迦町から中心部へと続く道。かつては立派な商家が
連なっていたと思われるが、現在では歯の抜けたような趣き。


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この店「明石屋 安源七商店」は現役である。
現在でもセンスのよいカレンダーやうちわ、扇子等を販売している。がんばってほしい。。


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付近の老舗商店としては他に有名な和菓子「あさ川」も古めかしい店構えで現役である。


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県道6号沿いの「大内靴店」の店構えも、レトロで素敵だ。



道なりに東へ歩いてゆくと、那珂湊の中心市街地へとたどり着く。

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このあたりが、那珂湊の中心部だが、例によって人通りはまばら。
海岸部の「おさかな市場」だけは観光客を呼び、週末はこのあたりも観光客の車が
肝心の街を歩く人はほとんどいない。
それでも、地元の人のための人気店はところどころにあり、午後になると買い物客がちらほら。。


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湊本町。


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湊本町の目抜き通り、県道18号。
古くからの民家も点在しており、道路整備の障害となっているのか、
県道の一部にこのような鍵形をなしている個所がある。


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湊本町に残る「さのや金物店」も現役である。


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湊本町の町中の様子。こちらも、古い家がわずかに残されている。


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蔵も残されている。こちらの蔵は、郷土資料館として利用されていたが、
2011年の震災以後、残念ながら休館となっている。


那珂湊の町中には、歴史的な建造物はもう数えるほどしか残っていない。
だから、テーマパークのように歴史的な町並みを期待することはできないし、
商店街などの市街地も歩く人はちらほらで、活気があるとは言い難い。
それでも、歩いていてなぜか心が軽やかになるこの町の不思議さだ。

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海へ向かう道は、風がさわやか。
人通りは少ないが、さびしい感じはなく、気持ちよい穏やかな時間が流れている。


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こちらの「井上クリーニング店」の店構えには、なぜかとても心ひかれるものがある。
ご夫婦でしっかり営まれており、この町を支える店のひとつと感じた。


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再び釈迦町あたり。


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釈迦町から那珂湊高校方面へ細い路地をたどると小高い丘へ登って行ける。
丘の上の在所は、その名も山ノ上町という。


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山ノ上町を南に抜けると、那珂川が見えてくる。


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那珂川のほとりに下りて行ったところ。


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那珂川に沿って静かな住宅地が続く。気になる商店も。
このあたりは栄町という。


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さらに河口近くまで歩くと、町の名は海門町と変わる。
美しい構えの、昔ながらの鍛冶屋があり、
嬉しいことに現役で、中で懸命に作業するご主人と思しき人の姿が見えた。


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海門町の住宅地にて。


いよいよ海べりに出てきた。ここには有名な「おさかな市場」があり、観光客向けの鮮魚店、海産物の土産物屋や寿司店、料理店が並んでいる。
静かな那珂湊でそこだけは活況を呈しているのだが、多くの観光客はそこで買い物と食事を済ませ、そそくさと車で町を去る。

なお、この「おさかな市場」は数十年前までは実際の魚市場であったそうだ。現在は沖合の埋め立て地に移転している。

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那珂湊漁港。向こうに見えるのが観光客向けの「おさかな市場」


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現在の魚市場。昼間は閑散としている。


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漁港近くでは漁具などをしまう倉庫がずらり。


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漁港近くでは釣りを楽しむ人も多い。


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那珂湊は他所で獲れた魚介の加工地としても栄え、かなり物資の集散があるようだ。
漁港沿いには多くの倉庫やトラック用の駐車スペースがあり、大型トレーラーの姿も多い。
また上写真の右奥に写っているのが茨城県立海洋高校。
茨城県でも随一の漁業、水産の専門高校が那珂湊にあるのだ。


再び、町中へともどってゆく。

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湊本町の路地にて。
テーラーのカモガワの青い看板がすてきだ。


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町中では漁網の店をいくつも見かける。さすが漁業の町だ。


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あるいてゆくと、町名は東本町へと変わる。
静かな住宅が多いが、本当にのびのびした雰囲気の町である。

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さらに東に向かうと、和田町に入る。

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和田町の入り口で、数年前まで営業していた那珂湊最後の銭湯「亀の湯」。
古色蒼然としたこんな銭湯が、先日まで現役であったのだ。


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古い家並みが残る和田町中通りかいわい。
和田町は、船主や富裕な漁師が居を構えた地域であるといい、いまもその邸宅群がわずかに残されている。

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一番右の駐車場部分にも、2011年の震災前には歴史的な船主邸宅が存在したそうだ。


今度は北へ向かい、湊泉町あたり。

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那珂湊には、チョーさんが勤めていたような、
昔ながらの総合食料品店がまだ健在である。


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湊泉町から再び、那珂湊駅付近へ戻ってきた。
駅の北側にも、レトロな倉庫が立ち並んでいる。

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◎ 那珂湊駅 ◎

歩くほどに趣深い那珂湊の旅のスタートにふさわしい、とても雰囲気のよい駅である。
2007年頃、廃線の危機にも立たされたが、「ひたちなか海浜鉄道」として再出発し、現在では利用客も少しずつ増加に転じているのは喜ばしいことである。

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下校の時間帯には学生たちで華やぐホーム。


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昭和を色濃く残すキハ205が停車中。

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まだ若い二人。


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暮れゆく那珂湊駅にて。

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待合室は広く、ややごちゃごちゃしているが、いい雰囲気である。


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那珂湊駅には、マスコット猫の「おさむ」と「ミニさむ」もいるが、
それ以上に、こんな素敵な女性駅員さんもいる。


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この列車で、那珂湊をあとにしよう。



本文 2014年4月
撮影 2013年7月、8月


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